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電子マネーにまつわる疑問(4)選択と集中で失効を防ぐ

国立情報学研究所 岡田仁志先生に、電子マネーにまつわる疑問を、オプンラボ コバヤシが聞く最終回。アジアのソーシャルコマース普及と、多様な電子マネーをどのように使いこなせばよいのか、利用時の注意点を伺いました。
  
アジアのEC
 
小林:海外のネットでの取引や決済について何か注目すべき動きはありますか?
 
岡田:おそらく中国のユーザはネットで商品を購入する際のリスクに対する心構えができています。上海の
ECユーザにアンケート調査をしてみたのですが「ネット店舗の店員が不正を行うかもしれない」「ネットで頼んだ商品が届かない」と考えていることがわかります。
 
小林:日本にいるとネットで注文したら必ず届くだろうとつい思ってしまいますね。
 
岡田:中国のユーザは基本的にトラブルに備えて入念に調べます。ネットで注文したのに、わざわざ店舗に行って商品と引き換えに代金を支払う、店頭代引きともいえる手段をとる人もいます。
 
小林:徹底してますね。
 
岡田:消費者保護のあまり整っていない国では、トラブルを避けるために民間のエスクローサービスや会員制のサービスが支持されています。
 
小林:直接取引するのではなく、ワンクッションおいて安全性を担保しているのですね。
 
岡田:一方、東南アジアで広がっているのは、SNSサイトを利用したECです。ソーシャルコマースまたは代表的なサービスの頭文字をとってFコマースとも言われています。
 
小林:FacebookのFですね。日本ではまだあまりなじみがないように思いますが。
 
岡田:確かに日本ではまだ普及していません。けれど、タイなど東南アジアの一部では標準的に使われています。
タイでFコマースが受け入れられている理由、というのは今まさに私の研究テーマです。ひとつは、情報の信頼性にあるのではないかとみています。
 
タイの洪水のとき、政府はまだ大丈夫といい、バンコク都知事は非常事態だといい、報道もどちらかにブレていました。そこで、正確な情報源として浮上したのが、Facebookでした。
 
政府の発表した河川運河マップの浸水情報に、ユーザが近所の最新データを書き込んでいき、極めて正確にアップデートされた情報を作り上げたのです。
 
小林:情報が錯綜した震災の時の日本の状況を思い起こします。
 
岡田:そして、どこの運河には象さんの親子が取り残されている、象さんはお鼻が長いので息はできるけれども、そろそろ小象は鼻が届かなくなりそうだ、といった情報が流れると、誰かが現地まで確かめに行って、実際に助けてあげたそうです。
 
小林:相変わらず、岡田さんは微笑ましいエピソードをはさみますね(笑)
 
岡田:こうしたソーシャルメディアが信頼された背景には、Facebookで会話をしている相手は、顔の見えない不特定多数の人ではなく、普段から世間話をして共感しあうインテリジェントな仲間、という意識があるのでは、と想像しています。
 
電子マネーが失効する?!
 
小林:事業者側ではなく、今度は利用者として電子マネーに関する注意点は何かありますか?
 
岡田:自分がよく使う電子マネーをしっかりと選んで、用途ごとにメインカードを絞り込むのが得策です。気をつけないと、貯めたポイントを失効してしまうという事態も発生するからです。
 
小林:確かにリアルにスタンプやシールを集めるのとは違って、どれに何ポイント入っているか、わからなくなりそうです。
 
岡田:また、おサイフケータイに数種類の電子マネーをインストールしている場合、機種変更の際の手続きで、移行手数料がかかる場合もあります。全て使い切るのが簡単ですが、地方限定の電子マネーは簡単に使い切れません。
 
小林:選択と集中が必要ですね。
 
岡田:ポイントだけでなく、電子マネーも永遠なものではありません。
 
小林:電子マネーも失効するんですか?
 
岡田:もちろん突然サービスが停止されることはありませんが、文具券が廃止になってしまった事例のように、法律で決められた公告期間を経て廃止になることはあり得ます。
 
小林:現金よりもむしろ金券に近い存在なのですね。
 
快適で楽しい電子マネーの社会へ
 
岡田:電子マネーは記憶力を持ったお金です。誰がどこで何を買ったのかを覚えておくことができ、さらに未来の行動を予想することさえ可能です。
 
小林:企業のマーケティングには魅力ですが、データの使い方が行き過ぎると恐怖を感じてきます。
 
岡田:将来の電子マネーはサービスの魅力が鍵になります。利用者にどれだけ楽しいと思ってもらえるかどうか。例えば、個人情報を登録する見返りとして得られるポイントが魅力的であるとか。
 
小林:コストとして支払う「自分の情報」を十分に上回るメリットが得られるのであれば、利用者はすすんでサービスを受け入れてくれるということですね。
 
岡田:日本の消費者は、もともとポイントを貯めたり、チラシを比較するのは大好きです。
 
小林:ベルマークのように。
 
岡田:消費者にとっては、サービスのお得感と楽しさは不可分一体ですから、結局は楽しいサービスだと思ってもらえるかどうかにかかっています。
 
電子マネーは個人の生活を把握する万能の記憶となるかもしれません。それは消費者の不安をあおることにも、これまでにない快適さをもたらすことにもなります。消費者にとってちょうど良い快適さとはどのぐらいなのか、それを上手に読み取ったサービスだけが長く支持されるのではないでしょうか。
 
小林:「電子マネー」というキーワードだけをみると一歩距離を感じますが、お話を伺い、改めて身の回りはいろいろな電子マネーに囲まれていることを認識しました。お金が電子になり、記憶をもつようになる。そして何に対して対価を払うか、その対価の概念さえも変わってきている様子を、ちらっとですが知る事ができたように思います。
 
4回を通じて、いろいろ教えていただきまして、ありがとうございました。
 

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